2012年1月14日土曜日

エンディング・ノートを観る

まだ今年は始まったばかりですが、今年のマイベスト1は早くもこの映画になりました。

「エンディング・ノート」。胃がんのため69歳の若さで亡くなった砂田知昭さんの、文字通り最期の日々を綴るドキュメンタリー映画です。監督は本作がデビュー作となる砂田麻美さん。
そう、知昭さんの次女が撮影、編集、監督を務めているのです。製作は、砂田麻美監督が、ずっと監督助手として師事している是枝裕和さん。

「死ぬまでにしたい大切なこと〜もし余命3ヶ月と言われたら〜」という和訳の本がありますが、友昭さんは末期がんの宣告を受けた際、残された日々を前向きに生きるとともに、残された家族が困らないよう10項目のTO DOリストを作りました。”法的拘束力を持たない家族への覚え書き”のようなものとあります。

映画の内容にかかわるので多くを書くことはできませんが、3つの点で極めて優れた作品になっていると思います。

1.キャメラが深い。砂田麻美監督は普段から家族や友人だちをビデオ撮影しているそうですが、元気な頃の映像との対比と、ここまでキャメラを向けるかという現場まで回していて、取材がとにかく深いのです。何気ない映像がここまで人の心を動かすのかと思います。ですが、葬儀撮影だけは別の方が撮影していて、そんなところにほろっとさせられました。あと、奥様との二人だけ(のはずの)シーン。泣けました。男だったら無人にせよ、有人にせよ、多分キャメラは回せなかったのではないかと思ったりもしました。

2.主人公である砂田知昭さんの人間味溢れるヒューマニティ。最期までジョークを言っているような方です。知昭さんを取り巻く奥様を始めとした家族像もとても丁寧に描かれています。ある死の話に終わらず、誰もが経験する家族の物語に昇華させたところが凄い。知昭さんには尊敬の念すら覚えます。感動する前にこう思いました。自分の最期もこうありたい、と。

3.そうくるかという絶妙の構成力。これは普段キャメラを回しているからこそ磨かれる観察眼だと思います。最後迄とくにかく明るい。でも、どしーんと残していく。

ドキュメンタリーではありますが、映画として作品性をちゃんと持っています。
こういう作り方をする人を初めて見ました。自分の日常の中から、普遍に到達する。
できることではありませんよ。ね。

僕はあと1、2回観たいと思います。
皆さんも、ぜひ。

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