2013年3月14日木曜日

テイスティングという文化

Team,

 シドニーの休暇もきょうあと一日。明日のホテルから空港へのピックアップをリコンファームしたり、少しだけお土産探しをしたり。とてもいい感じだったThe Rocksの気になっていたお店をのぞいてみることにした。その一つがWine Odyssey Australiaだ。このお店は、ワインダイニングと60種類以上のオーストラリアワインのテイスティング。そして、その隣に小粋なワインショプが軒を並べている。
 オーストラリアは言うまでもなく、ワインの一大輸出国だけれども、日本人には今ひとつ馴染みがないだろう。うろ覚えの記憶ではあるが、日本で消費される60%くらいのワインはフランスワインだ。みんなボルドーやブルゴーニュをありがたがる。札幌にも一見さんお断りのブルゴーニュワインだけを扱っているバーがあるくらい。あのイタリアワインでさえ、ある意味で苦戦を強いられているのだから、いわんや豪州ワインをやである。
 ワインの蘊蓄を語りたいのではなく、生活の中に根づいているテイスティングというワインに対するカルチャーがとても素敵だと思ったからだ。ワインを目利きしたり、日本酒では利き酒をしたりというのがあるが、基本的にはプロフェッショナルなものだし、どうみても趣味の範囲は出てはいないように思える。日本では、「昼間からアルコールなんて!」というそもそも論がまだ根強い。ようやくビールには少しは寛容になってきたかも分からないが、日本酒にはせっかくの伝統酒であるにも拘らず、どうもネガティブなイメージがつきまとっている。
 テイスティングとはこんな感じだ。カウンターで顔のついたID(豪州では飲酒は18歳から)か、観光客であればクレジットカードを受付に出す。そこでICチップのついたカードが臨時に発行される。あとはワイングラス(何種類もある)をとって、好きなワインの前に行って、「テイスティング」または、「グラス」。そして気に入れば「ボトル」と3つのボタンを押せば、あら不思議、ワインボトルからワインがチューブで吸い上がってきて、グラスを満たしていく。もちろんワインの種類にもよるけれども、グラスで5ドルであれば、テイスティングなら2ドル30セントとか、とてもリーズナブル。隣のワインショップでも、このワインはテイスティングできますよ、というポップが貼ってある。
 



テイスティングも立派な文化だと思った。もっと北海道のお酒を応援したい。小ポーションでもいいから、まずは触れてもらおうというのがテイスティングなのかも知れない。特に、ワインでは飲む人の官能に大きく委ねられているわけだし、それなら日本酒でも出来ない訳ではないだろう。一つの酒蔵だって、いくつもの醸造方法で、いくつもの種類のお酒を作っているわけだから。僕はいくつものセミヨンやピノグリージョ、シャルドネ、ピノノワール、メルロー、カベルネ、シラーズをテイスティングして、気持ちよく酔った。
とてもキュートなワインショップのスタッフに、私の大好きなワイン、と言われてStuart Olsenが作るEloquestraという小さなワナリーのShiraz/Petit Verdo (Vintage2010)を買い求めた。この地でいうところのブティックワインだそうだ。

 シドニーでずっと感じている、ダイバーシティ(多様性)を思った。田舎に行くと、昔の白豪主義を感じるアジア人も多いと思うけれど、世界は多様性こそを包容すべき時代に来ている。モノポリーな文化、文明ほど恐ろしいものはない。それは、現代史でいえばナチズムであり、文化大革命だったであろう。戦前の日本も国家色の強さで言えば、今の中国と大差はないように思える。モノポリーは文化を寡占化するといういみでシェアだったが、今は共有、共感という真の意味でシェアの時代だ。

 札幌市立大学の武邑学長の言葉を借りれば「社交化する物語」のまっただ中に私たちはいるのだから。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿