2011年11月19日土曜日

5席だけのマジック

大きなコトには、小さな成功の秘密がある。

ルミエールペティアンという純国産のスパークリングワインをご存知だろうか?
通称「ペティアン」。国内最強と言われる山梨県勝沼ワイン郷から車で約10分。
笛吹市一宮町南野呂にそのワイナリーはある。創業は実に1885年。
もちろん、ワインを作っているのだが、スパークリングを世に問うたのは、なんと2007年ビンテージ。初号(市場には出なかった)は2006年。フランスから超がつく一流の目利きを呼んで、出来映えを評価してもらったのだ。結果、フランス人たちは「なんてエクセレントな!」と驚愕して、ぜひ世の中に出すべきだと言ったそうだ。


2007年、そのスパークリングは世に出た。残念ながら2,000本限定ということもあって、この世の中にはもうない。ルミエールペティアン。現在の皇太子夫妻の結婚式にも供された、由緒正しい皇室御用達でもある。


ワイナリーの方の話によれば、こういうことだ。


「この葡萄は弱いのです。だから樽熟(樽で熟成させる)というコルクキャップを運命づけられているスパークリングにとっては、とても難しい選択肢を敢えて選びました」


僕はワイン部部員であるけれども、この言葉の意味は正直分からない。


でも「直感」で凄い!と思える。


きょうから久しぶりの家族旅行で、息子がいる京都に来ている。彼は2012年4月には
東京で働くことになっている。ので、まぁ、”最後”の家族旅行でもある。


就職祝いにワイフが選んだお店はわずかカウンターで5席だけのフレンチだった。
LE SINGE. ル・サンジュという。








素晴らしいお皿の競演だった。とても素敵な「食べて語らう」という場があった。


シェフ一人にやれることを、ただ誠実にやっている。
そのことが、人を感動させる。主客一体。利休が辿り着いた「真理」だ。


今夜は四宮家4名が夜の営業時間帯を独占した。席は1席空いているのだが、店主は
それを他の客のためにリザーブすることはない。


店主は、こう考えるからだ。


カウンターでわずか5席。カップルで来ると真ん中の1席は空けておく。
カップルと3人組だったらどうしよう。会話の合わないお客様が来ることだって
あるだろう。その時だ、店主は祝宴を主催する「主人」として、客同士の会話を
プロデュースする。一皿の素材、味わいをめぐって、見知らぬ者同士がダイアローグを
始めるのだ。それは三浦友和さんの本ではないが説明のできない「相性」というものあるだろう。英語でいうChemistryだ。だが、そこには幸せな「場」がある。


5席のマジックだ。


僕たちもぜひこうありたいと思う。


ルミエールペティアン。日本が、日本人が世界に誇る「国産」。
これこそMADE IN JAPAN。モノ作りの原点がある。


現在のビンテージは2009年。ブラン、ルージュ、オーランジュと3種類の味わいが楽しめる。
山梨まで行けない人のために、インターネットでも販売しているし、都内には
とても誠実な国産ワインショップを運営している。


僕が知る限り、ペティアンを飲めるのは資生堂パーラー銀座本店の改装なった、素晴らしい
レストラン、FAROだけだと思う。


おっと、忘れていたLE SINGEはフランス語で「猿」だ。


Stay Hungry, Stay Foolish.


大きくなることを選ばない。京都のフレンチとしてより本質的なところへ辿り着きたい。
「猿」を店名に選んだ店主は京都っ子ではない。


つまり、イノベーションは「辺境」から来たのだ。
正しい時と、正しい場所を選んで。











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